2017年に日本公開だった映画『ノクターナルアニマルズ』。
1993年にアメリカの作家オースティン・ライトが発表した小説『ミステリ原稿』を映画化したものです。
今でもこの作品を劇場で観た時の興奮が忘れられません。
物語の構成、秀逸な演技、アートな映像美、わたしにとってこの作品は映画を観た満足感でいっぱいになれる映画のうちの一つです。
トム・フォード監督最新作ということで前作の『シングルマン』みたいな全体的に静かで美しい作品を想像していたので、しょっぱなからのどぎつい強烈な映像と胃が痛くなるようなお話の連続にびっくりでした。
意味深なラストの解釈も観る人によって大きく変わる作品で、これほど鑑賞後に誰かと作品について話したくなる衝動にかられる作品もなかなかないです。
明確な答えは用意されてはいないそのラストシーンの気になる意味を私なりの解釈で説明していきたいと思います。
目次
『ノクターナルアニマルズ』のあらすじ
夫の浮気などもあり幸せではない満たされない生活をおくるスーザン。
ある日、20年前に離婚した前の夫エドワードから、彼の書いた小説「ノクターナルアニマルズ」が送られてくる。
スーザンに捧げられたその小説の内容はとても暴力的で衝撃的なお話。自分が過去に見限ったエドワードの才能を感じながら、過去の彼とのことを振り返るスーザン。
エドワードはなぜその小説をスーザンに送ってきたのか。それは愛なのかそれとも復讐か、、。
『ノクターナルアニマルズ』のみどころ
出典:映画.com
世界的ファッションデザイナーのトム・フォード監督なだけあって細部にもこだわり抜かれた映像センスが素晴らし過ぎます。
ファッションやインテリアもオシャレで、劇中も意味深で気になるアート作品がちょくちょく出てくるのですが、そこにも物語を読み解く上での多くの意図が感じられます。
そしてマイケル・シャノン、エイミー・アダムス、アーミー・ハマーなど豪華俳優陣。
大好きなジェイク・ギレン・ホールは今作でもその圧倒的な演技力の高さで物語にグイグイ引き込んできます。
ジェイクの出演する作品はいつもほんとに面白い作品が多く、ハズレがない。
彼が出演していると聞くと必ずチェックしちゃいます。
『ノクターナルアニマルズ』のラストの意味
出典:映画.com
※ここからネタバレあり
わたし個人の解釈ですが、ラストをああすることで監督は”大切な人を打算的に手放してはいけない。一度捨てた愛は戻らない。”というようなことを伝えたかったのではないかと考えます。
エドワードが小説を送りつけた目的はスーザンが信じなかったエドワードの作家としての才能を見せつけることと、スーザンがエドワードにした自己中心的で酷い行いを改めて突きつけること。
スーザンは過去にエドワードの才能を信じずみかぎり、子供を勝手に中絶しました。新しい男といるのも見られています。作家、夫、男としての自信も妻もお腹の子供もすべてを奪われたエドワード。
小説の中のトニーから男としての尊厳や妻と娘を残酷に奪った男レイ=スーザンなのではないかと思いました。
小説の中で描かれるレイのおぞましいまでの残酷さはそのままスーザンへの恨みにも感じられます。
スーザンはエドワードが自身のことを小説にしていて、レイが自分であることにも気がついていたと思います。
小説を読みながら過去に自分がしたことへの深い後悔の念に改めて襲われていたことは、従業員を解雇するかどうかの話し合いにも表れていました。
変化が大事だと言っていた彼女が変化ばかりを追うのはいい考えだと思えないと意見を変え、従業員を切り捨てることに反対しています。
変化を求め、愛やロマンよりも現実的な豊かさを求め、エドワードを切り捨て今の暮らしを手にしたスーザン。
だけど最近は新しい夫の仕事も破産寸前でうまくいっておらず、浮気もされ、結局満たされない生活を送っています。
小説の中で銃が暴発して死ぬトニーは”君を純粋に愛していたエドワードはもういない”ということを表しているようにも感じました。
そしてまたエドワードに将来を感じ、口紅を整え結婚指輪を外し彼に会おうとするスーザンのあさましさにあのラストをつきつけたのではないかと思います。
まとめ
出典:映画.com
- 『ノクターナルアニマルズ』は現在、過去、劇中劇で構成され練られた秀逸なストーリ。
- トムフォードのセンス溢れるアートな映像とジェイクギレンホールら俳優陣の狂気的な演技に注目。
- ラストはちまたで議論されている愛か復讐かでいうと復讐の色が濃いとわたしは考えます。
この作品は復讐ではなく愛の物語だっていう人もいたり、そもそも小説を書いたのはスーザンなのではないかという人もいます。
いろんな解釈で楽しめちゃうこの作品、映画史に名を刻む傑作であること間違いなしです。
あなたはこれをどういうラストに感じるかぜひトライしてみてください♪