『フレンチアルプスで起きたこと』は2014年制作、2015年に日本で公開されたスウェーデン、デンマーク、フランス、ノルウェー合作の作品です。
カンヌ映画祭のある視点部門審査員賞を受賞しています。
まず最初にこの作品は劇的な展開が立て続けに起こるというようなお話ではないです。
どちらかといえば全体的にすごく静かに物語は進んでいきます。
なのにその絶妙な演出で人間心理を突かれ、なんとも言えない居心地の悪さにハラハラし、次にどうなるのか目が離せなくなります。
リアルに意地悪に男女の性質を浮き彫りにしていく姿がほんとにお見事で、これは絶対にカップルでは観ない方がいい作品です。
これからこの作品の面白さを簡単に解説、紹介していきたいと思います。
目次
『フレンチアルプスで起きたこと』のあらすじ
フレンチアルプスのリゾートにスウェーデンからバカンスにやってきた4人家族。
ビジネスマンの旦那さんと仲良しの奥さんに可愛い子供たち2人。
幸せにバカンスを楽しむ一家は2日目の朝食中にテラスで雪崩に襲われます。
奥さんが必死に子供を助けようとし逃げ遅れる中、お父さんは子供の叫び呼ぶ声も無視し携帯を手にとり一人で慌てて逃げ出します。
結局みんな何ともなく大事には至らなかった雪崩ですが、自分たちを置いて一人逃げ出したお父さんに対する家族の抱く不信感と逃げたという事実だけ残ってしまったお父さん。
男性に暗黙的に求められている英雄像が崩れた時、幸せだった家族はどうなっていくのかー。
『フレンチアルプスで起きたこと』みどころ
出典:映画.com
※ネタバレあり
基本長回しで撮られた映像と絶妙なタイミングで差し込まれる音楽、ヴィヴァルディの『四季』から「夏」のパンチ力が凄いです。
わたしは女性なので最初観ていて、家族を置いて真っ先に逃げ出すような旦那とか絶対いやー!って思い、奥さんに肩入れしながら観ちゃいました。
男ならせめて子供だけでも自分の命を捨ててでも守ろうとしてほしい。
家族を守らなかったことで男としてどんどん追い詰められるお父さんですが、鑑賞後気になって調べたところ、世の男性で“死に直面するような場面で体を張って家族を守る“そんな英雄的な男性はとても少ない、いや、ほとんどいないらしいです。
男性はそういった場面では本能的に自分の身を守るように、女性は本能的に家族を守るように行動する。
それは生物の本能レベルのお話として証明されていて、そもそもの男性に押し付けられた理想的な英雄像には生物学的に無理があるのです。
実際に大きな事件や海難事故などに夫婦が巻き込まれた場合、ほとんどの夫婦はそれをきっかけに離婚しちゃうらしいです。
この作品も監督のお友達夫婦がちょっと危険な国に旅行に行って強盗に拳銃を突き付けられたとき、旦那のほうだけ一人で逃げ出したという話とその後その話でずっと喧嘩する二人の姿をみてひらめいたそう。
そして爆笑とかではないけど、ところどころ挟み込まれるちょっとブラックなコメディ感も面白い。どんだけ底意地悪い展開もってくるのー!ってくらいお父さんはボッコボコ。
途中、追い詰められすぎておかしくなってしまうお父さんは前に記者会見で大泣きした野々村県議のようにも見え、あれも自分を守るための退行という防衛本能であることもこの作品で知りました。
後半あきらかに奥さんが一芝居打ったと感じるシーンがあり、結局は女性が男性を上手くコントロールしなきゃってことなのかなって思い苦笑いでした。
この作品は最初こそ徹底的に男性を意地悪に攻撃しているような話かと思ったのですが、終盤に見せる奥さんへと矛先の向いた展開にはその平等性を強く感じました。
男も女も所詮は同じ生き物であるとでもいいたげな。
あそこに一人で残ったのがあの自由に生きる友人であるのも見逃してはならないポイントです。
あのラストシーンのみんなの微妙な表情。なんともシュールでクセが強いけどこの作品ほんと凄い!って興奮しちゃいました。
まとめ
出典:映画.com
- 家族を守らず一人で逃げたお父さんが徹底的に追い込まれ、心理的にハラハラさせられるブラックコメディ。(わたしは痛々しすぎて笑えなかったけど)
- 基本長回しで撮られた映像と絶妙なタイミングで差し込まれる音楽、ヴィヴァルディの『四季』から「夏」のパンチ力が凄い
- 男女の生物学的な違いからみて、男性に求められている英雄像はとっさの事態においては理想を押し付けただけの幻想である
個人的に男女の違いや男性を知る上でとても勉強になった今作。
わたしは何かの事態に巻き込まれた時にも男性に変に期待せずにいようと思いました。(笑)
気になったらぜひ観賞してみてください♪